あらすじ
古本屋「十月堂」には、読むためだけではない事情を抱えた人々が訪れる。店主は買い取りに持ち込まれた蔵書を見て、残す本と手放す本に迷う持ち主の話を聞く。一冊を長く捜してきた客もいれば、本には興味がなかったのに棚の題名へ足を止める人、故人の本をどう扱うか決められない人もいる。店で働く側にも、値付けして商品にする視点と、本に結びついた記憶を尊重したい気持ちの間で判断が求められる。各話は異なる本と客を扱い、十月堂を出た本が別の読者へ渡るまでを映す。物の所有は終わっても、書き込みや読んだ時間までは消えない。本を売るという行為を入口に、人が過去を整理し、次の誰かへ何を託すのかを描く短編連作である。
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